こんにちは。皆さんは膝が痛むことがありますか？膝の痛みは外傷によるものをはじめ、様々な原因があります。その中でも最も多い原因の1つに、変形性膝関節症があります。
変形性膝関節症は、関節の軟骨がすり減ることで発症し、進行すると関節が変形してしまう病気です。世界では何と6億人もの人が罹患し、日本でも2,530万人（40歳以上を対象）の患者さんがいると推計されています1)。男女比は1：4と女性に多く、高齢になるほど罹りやすくなるとされています2)。
変形性膝関節症の治療の原則は、運動や薬などによる保存療法です3)。このうち、運動療法として筋トレやエアロビックが行われていますが、今回、これらに加えてヨガも有効であるとする研究結果が発表されましたのでご紹介したいと思います。
そのヒザの痛み、ヨガが軽くしてくれるかも
2025年4月8日、JAMA Network Openにヨガと筋力強化運動のどちらが変形性膝関節症による膝の痛みを軽くするかを比較した論文が掲載されました。オーストラリアの1つの施設で行われた試験（ランダム化比較試験）で、2021年4月〜2022年6月に登録された、40歳以上で中等度の痛み以上（VAS：40mm以上）の変形性膝関節症の患者さん117人を対象としました。そして、「ヨガを行うグループ」と「筋トレを行うグループ」に均等に分け、12週間後の膝の痛みの強さを比較しました。
その結果、両方のグループで膝の痛みは有意に改善しており、その改善度はヨガと筋トレで差はありませんでした（下図AとB）4)。
興味深いことに、痛みの改善度は両者で変わらなかったものの、ヨガを行ったグループではうつ症状が筋トレを行ったグループと比較して有意に改善していました。更に、24週間後では、ヨガグループは筋トレグループよりも痛み（WOMAC pain、上図のB）とQOLが有意に改善するなど、筋トレには見られなかった多くのメリットが確認されました。
A pharmacist’s view
この研究を通じて思うことは、ヨガは「運動＝キツい」という心理的なハードルが低いため、より運動療法として取り入れやすいのではないかということです。
筋力強化運動は、以前より変形性膝関節症の治療に重要な役割を担ってきました。しかしながら、筋トレは「キツい・ツラい」といったイメージがあります。このため、治療のハードルとなってしまう可能性があります。一方、ヨガはストレッチやマインドフルネスの要素が含まれており、筋トレとは大きく異なります。「しんどい」と感じることが比較的少ないため、運動療法として取り入れ易いのではないでしょうか。
注意点として、この研究ではヨガグループで有害事象がやや多かったと報告されています（ヨガグループ：55.2%、筋トレグループ：44.1%）。この原因としては、ヨガグループの患者さんはヨガのポーズに不慣れであったことがあると著者らによって述べられています。ヨガを取り入れる際は、馴染みのない患者さんもいらっしゃると思いますので、一度専門家によるサポートを受けてから始めるのがよいでしょう。
ヨガはマット1枚あれば手軽に行うことができます（私も朝と晩に毎日行っています）。ヨガスタジオなどに行ってみるのもよいですが、YouTubeの「B-Flow」など、インターネット上に多くの動画がありますので、医師などと相談しながら始めてみてはいかがでしょうか。
まとめ
変形性膝関節症による痛みは、運動により軽減させることが可能です。運動療法としては、これまで筋トレが主流でしたが、ライフスタイルや嗜好に合わせてヨガを取り入れてみても良いかもしれません。痛みのみならず、精神的にプラスの効果が期待できます。更に、痛み止めを使用する量を減らしたり、生活の質が今まで以上に向上することが望めると思います。
気になることがあれば、ご質問を受け付けておりますので、どうぞお気軽に「お問い合わせ」からご連絡下さい。
参考文献など
1) 日本生活習慣病予防協会ホームページ「生活習慣病の調査・統計」
2) 日本整形外科学会ホームページ「変形性膝関節症」
3) 変形性膝関節症診療ガイドライン2023
4) Bedru J. Abafita（2025）”Yoga or Strengthening Exercise for Knee Osteoarthritis A Randomized Clinical Trial” JAMA Network Open, 8（4）:e253698.
