こんにちは。皆さんは、日々どのくらい歩いていらっしゃいますか?仕事がデスクワークであまり歩かないという方がいれば、外勤で歩いてばかりいる方もおられると思います。
先日、早歩きが不整脈を防ぐという話をさせて頂きました(こちらをご参照下さい)が、歩数はどうなのでしょうか?歩数と健康が相関するというデータは世界中から報告がありますが、「何歩がベストなのか?」など、歩数についてはまだ多くの議論があります。
今回は、「歩くだけ」でがんの発症リスクを減らすことができるという話をしたいと思います。英国のデータを使った最新研究に加え、健康のヒントもご紹介いたしますので、ぜひ参考にしてみて下さい!
がん予防は「今より1歩」から:大規模研究が裏付ける「歩くだけ」の効果
2025年3月26日、British Journal of Sports Medicine誌に、歩数とがんの発症リスクとの関連を調査した研究が掲載されました。英国などから報告された前向きコホート研究で、英国バイオバンクに登録された成人(中央値:63歳)、85,394人を対象としました。
まず、リストバンド型の加速度計を7日間装着し、この間の身体活動量や歩数などを記録しました。その後、平均5.8年に渡って、運動に関連するとされる13部位のがん(食道がん・肝臓がん・肺がん・腎臓がん・胃噴門部がん・子宮内膜がん・骨髄性白血病・骨髄腫・結腸がん・頭頸部がん・直腸がん・膀胱がん・乳がん)の発症リスクを調査しました。
結論:歩数が増えるほど、がんの発症リスクは低下する
歩数(歩) | ハザード比(全体)(95% 信頼区間) | ハザード比(男性)(95% 信頼区間) | ハザード比(女性)(95% 信頼区間) |
3,000 | 1.19(1.04〜1.37) | 1.37(1.10〜1.70) | 1.10(0.92〜1.32) |
5,000 | 基準 | 基準 | 基準 |
7,000 | 0.89(0.83〜0.96) | 0.82(0.73〜0.93) | 0.93(0.85〜1.02) |
9,000 | 0.84(0.76〜0.93) | 0.74(0.62〜0.87) | 0.89(0.78〜1.01) |
11,000 | 0.82(0.73〜0.91) | 0.71(0.59〜0.85) | 0.87(0.76〜1.00) |
13,000 | 0.80(0.71〜0.90) | 0.72(0.59〜0.88) | 0.84(0.72〜0.97) |
16,000 | 0.75(0.64〜0.87) | 0.69(0.53〜0.90) | 0.77(0.64〜0.94) |
その結果、1日あたりの歩数が増えるごとに、がんの発症リスクが低下することが明らかになりました1)(表1)。また、リスクの低下は7,000歩までが特に大きいことも分かりました。更に、この効果は、男性でより顕著であることも判明しました。
A pharmacist’s message 〜薬剤師からのメッセージ〜
父が骨髄異形成症候群という血液がんで若くして亡くなった経験がある私にとって、これまで血液がんに対する確立された予防法がないという事実は、大きな悩みでした。そのため、この研究に「骨髄性白血病・骨髄腫」という血液がんが含まれている点に、自然と目が留まりました。これらの病気は13部位のがんの一部ではあるものの、歩くことで血液がんの予防になる可能性があるという結果は、私のみならず、多くの方々にとっても一筋の光明であると感じました。
ですが、「毎日16,000歩!」・・・という目標を掲げるのは現実的ではありません。あまりに数値にこだわると、続けるうちに疲弊し、「歩くこと自体が辛い習慣」になってしまいかねません。だからこそ私が推したい言葉は、
ー今より1歩、今より1ランク上へー
今の現状を少しだけ向上させる。その積み重ねが、未来のあなたをがんから守ってくれることになると思います。ポイントは「楽しみながら続ける」こと。例えば、次のようなアイデアがあります。
✅ ゲーム感覚を持つ:スマートウォッチなどでバッジを獲得することを目標にする
✅ 歩行を音楽タイムにする:お気に入りの曲を聴きながら歩く(事故に注意⚠️)
✅ 仲間と一緒に取り組む:家族や友人と歩数チャレンジ
このような工夫をしながら、マイペースで「今日はここまで歩けた」と達成感を得る。歩数というシンプルな指標だからこそ、分かりやすく楽しみながら続けやすいと思います。私は薬を通じて患者さんをサポートすることが主な仕事ですが、そもそも薬を使う必要がないよう、皆さんの「歩数ワンランクアップチャレンジ」習慣を全力でサポートします。小さな一歩が、今後の大きな安心を生むはずです!
まとめ
「歩くこと」は多くの固形がんだけでなく、血液がんの予防にもつながる可能性があります。いきなり多くの歩数を目指すのではなく、「今より1歩、今より1ランク上へ」という小さな積み重ねが大切。ゲーム感覚や音楽タイム、そして仲間とのチャレンジなどを取り入れて、楽しみながら続けていきましょう!
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参考文献など
1) Shreves, A. H., Small, S. R., Walmsley, R., Chan, S., Saint-Maurice, P. F., Moore, S. C., … Doherty, A. (2025). Amount and intensity of daily total physical activity, step count and risk of incident cancer in the UK Biobank. British Journal of Sports Medicine. Advance online publication.
https://doi.org/10.1136/bjsports-2024-109360