こんにちは。皆さんは日本人の3大死因をご存知でしょうか?厚生労働省から公表されている資料によると、次の表のようになっています1)。
順位 | 死因 |
1位 | 悪性新生物<腫瘍> |
2位 | 心疾患 |
3位 | 老衰 |
3位が病気ではなく、老衰になっています。病気ではない原因がランクインしていることは驚きですね!
今回は、死因の第1位である「悪性新生物<腫瘍>」、すなわち「がん」について取り上げたいと思います。がんというと、「不治の病」というイメージを持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか?しかし、そのイメージは近年確実に変わってきています。先日、がんの生存率に関する希望あるデータが発表されましたので、ご紹介したいと思います。
がん患者の10年生存率、54%に上昇
2025年2月13日、国立がん研究センターより、がん患者さんの10年生存率が公表されました。生存率と言っても色々な種類があるのですが、今回公表されたものは純生存率(ネット・サバイバル)というもので、「純粋にがんのみが死因となる状況を仮定した場合の生存率」を示しています。
国立がん研究センターに登録された361施設、394,108例を対象としたデータによると、2012年に登録されたがん患者さんの純生存率は54.0%でした2)。2010年と2011年の純生存率は、それぞれ53.3%と53.5%でした3)。純生存率がゆっくりと、しかし確実に上昇していることが分かります。
一方、もう1つ興味深いデータも公表されました。それは、胃がんや乳がんなどで進行期(III〜IV期など)と診断されても、「1年長生きすると、その後の5年生存率が改善する」というものです。
下の図をご覧下さい。4つの図がありますが、それぞれ縦軸は5年生存率、横軸はがんと診断されてからの経過年数を示しています。I期の胃がんと診断された患者さんは折れ線が横ばいで、診断から時間が経過しても、その後の5年生存率はあまり変化がないことが分かります。一方、IV期の胃がんと診断されてから5年生存した患者さんは、その後の5年生存率が61.2%にまで上昇することが見てとれます。

A pharmacist’s opinion
これらのデータを見ると、がんと診断されても長期的に生存できる割合がかなり増えてきたという印象です。これには、食生活や運動習慣の改善といった健康意識の向上やがんの早期発見・早期治療、そして様々な新薬などが関係していると考えられます。
特に重要なことは、このデータが「今から13年も前に登録されたがん患者さんのものである」ということです。13年も前には、現在のがん治療の大きな一角を担うニボルマブ(商品名:オプジーボ®)などの「免疫チェックポイント阻害薬(ICI)」は販売されていませんでした。ICIにより治療成績が大きく改善したことを考慮するだけでも、現在がんと診断された患者さんの純生存率は更に改善している可能性が高いでしょう。
まとめ
現在、がんは不治の病でなくなりつつあります。純生存率は54.0%と徐々に上昇傾向にあり、今後の医療技術の進歩により更なる改善が期待できます。
気になることがあれば、ご質問を受け付けておりますので、どうぞお気軽に「お問い合わせ」からご連絡下さい。
参考文献など
1) 厚生労働省ホームページ「令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況」
2) 国立がん研究センター「院内がん登録2012年10年生存率集計公表、サバイバー5年生存率を初集
計」
3) がん情報サービスホームページ「院内がん登録生存率集計」