こんにちは。皆さんは柑橘系の果物はお好きですか?夏季は夏みかん、冬季なら温州みかんなどが有名ですね。輸入されているものも多く、1年中何らかの果物をスーパーで目にします。
柑橘系の果物はジューシーで清涼感があり、とても美味しいです。しかしながら、これらの中には薬の効果に影響を与えるものがあるという話、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。例えば、グレープフルーツ(ジュース)が有名ですね。でも、「他のものはどうだろう?」と思うことがあると思います。
今回は、柑橘系の果物と薬の効果について詳しく、そして分かりやすくまとめてみました。ぜひ、最後までお読み頂ければと思います。
薬の効果を強める柑橘系の果物とは?

上図は薬の効果を強める可能性がある柑橘系の果物の一覧です。夏ミカンやハッサクなど、多くの種類があります。加えて、外見が似ているものがあるという特徴があります。これ以外にも、きんかんやライムがあり、柑橘系の果物以外ではイチジクやざくろなども薬の効果を強めてしまう可能性があります。
温州みかん・レモン・ゆず・日向夏・かぼす・ネーブル・バレンシアオレンジ・マンダリンオレンジ・りんご・ぶどうなど
一方、上のリストのように、薬の効果に影響を与えにくいものも多くあります。温州みかんやレモン、ゆずなどの他に、りんごやぶどうといった柑橘系以外の果物は、比較的安心して食べることができます。
このように、薬の効果を強くする可能性のある果物もそうでない果物も、様々な種類があることが分かります。後述する薬を飲んでいる方は、ぜひ参考にしてみて下さい。
柑橘系の果物が薬に影響するメカニズム
そもそも、なぜ柑橘系の果物は薬の効果を強めてしまうのでしょうか?それは、これらに含まれている成分が体の中にある酵素の働きを抑えてしまうからです。
下図をご覧下さい。グレープフルーツなどに含まれる「フラノクマリン」は、体内に存在する酵素(CYP3A4)の働きを抑えてしまいます。この酵素は、血圧の薬(カルシウム拮抗薬)などを分解する働きを持っているため、これを抑えてしまうことにより、薬が体内から出て行きにくくなってしまいます。結果として、体内に存在する薬の量が増えてしまい、薬の効果が強くなったり、副作用の原因になったりすることがあります。しかも、フラノクマリンが酵素の働きを抑える効果は「ある程度の期間」続くため、この影響を受ける薬を飲んでいる方は、先に挙げた果物の摂取を控える必要があります。

ここで最も注意して欲しいことは、「薬の効果を高めたいから、あえてグレープフルーツなどを食べよう」という考え方はしないことです。これは、命に関係するような重い副作用に繋がる恐れがあります。薬の効果について疑問や不安な点がある場合は、遠慮なく医師や薬剤師に相談しましょう。
柑橘系の果物は、どのような薬の効果を強めるのか?
最後に、どのような薬が影響を受けるのでしょうか?代表的な薬を以下にまとめました。
・血圧を下げる薬(カルシウム拮抗薬)
・免疫を抑える薬
・不整脈の薬
・抗がん薬など
血圧を下げる薬(カルシウム拮抗薬)は一般的によく知られていますね。それ以外にも、免疫を抑える薬や不整脈の薬、そして抗がん薬など、薬の中でもリスクの高いものが影響を受けることに注意が必要です。
では、これらの薬は柑橘系の果物によって、どれくらい効果が強まるのでしょうか?
薬の名前(商品名) | AUC | Cmax |
ニフェジピン(アダラート®、セパミット®) | 134〜203 | 104〜194 |
アムロジピン(ノルバスク®、アムロジン®) | 108〜116 | 115 |
ジルチアゼム(ヘルベッサー®) | 110 | 102 |
ベラパミル(ワソラン®) | 143 | 161 |
シクロスポリン(サンディミュン®、ネオーラル®) | 108〜162 | 104〜132 |
この表は、以前にBritish Journal of Clinical Pharmacologyという論文に掲載された、グレープフルーツジュースの薬に対する影響を調べた研究結果です。「AUC」と「Cmax」という2つの項目がありますが、ここでは「体の中にどれくらい薬が増えたかを表す指標」と考えて下さい。グレープフルーツジュースを飲んでいない場合を100としたとき、飲むことでどれくらい体の中に薬が増えたかを表しています。赤字は、統計学的に有意に薬が増えたことを意味しています。
この結果を見ると、同じ種類の薬(ニフェジピンとアムロジピン)であっても、アムロジピンはグレープフルーツジュースの影響をあまり受けないのに対して、ニフェジピンは大きな影響を受けることが分かります。ニフェジピンはAUCとCmaxが約2倍になっていることから、大まかに言えば、薬の効果も2倍になる可能性があります。しかし、効果のみではなく、副作用のリスクも同様に高まる恐れがあることに注意が必要です。
血圧の薬ばかりでなく、不整脈の薬であるベラパミルや免疫を抑える薬であるシクロスポリンもグレープフルーツジュースの影響を受けることが分かります。これらの薬は、「ハイリスク薬」に位置づけられており、副作用により注意して使用しなければならないものです。
このように、様々な薬がグレープフルーツジュースや柑橘系の果物の影響を受けます。また、同じ種類の薬であっても、影響を受ける度合いは異なります。更に、摂取する柑橘系の果物の種類が何であるのかという要素も加わるため、「自分が飲んでいる薬がどのくらい柑橘系の果物の影響を受けるのか?」を正確に評価することは容易ではありません。
その評価をサポートするのは、薬剤師の仕事です。柑橘系の果物を召し上がる際は、薬剤師に一度相談してみると良いと思います。
まとめ
柑橘系の果物は美味しく、健康的な食べものです。しかし、その中には一部の薬の効果を強めてしまう可能性があるものもあります。
まず、現在服用している薬が、これらによる影響を受けるかどうかを知ることが重要です。ご紹介したもの以外にも、影響を受ける薬はたくさんあります。薬を服用中の場合は、上図を参考に果物を食べるようにし、気になる点があれば薬剤師に相談しましょう。より安全に、薬を使用できるようになると思います。
気になることがあれば、ご質問を受け付けておりますので、どうぞお気軽に「お問い合わせ」からご連絡下さい。
参考文献など
1) 大阪国際がんセンターホームページ「グレープフルーツ以外にも注意したい食材」
2) お薬Q&A〜Fizz Drug Information〜ホームページ「「グレープフルーツジュース」で、血圧の薬を飲んだらダメなのは何故?」
3) David G. Bailey(1998)”Grapefruit juice-drug interactions” Br. J. Clin. Pharmacol., 46: 101-110.